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日本でFour Seasons、Park Hyattという高級外資系ホテルに勤務し、ホテル経 営学の学習と、アメリカへの興味に駆られてUNLV Undergraduateへ入学。 卒業後、The Ritz Carltonへ就職するものの、さらにホテルマンとして上を目指して UNLV Graduateへ入学し、修士課程を修了。そして現在、自身の憧れであった世界 トップレベルの超高級ホテル「The Peninsula New York」で勤務。高級ホテルを経験 し、ホテルマンとして常に最先端を走っている西川真さんのインタビューです。

まずは自己紹介をよろしくお願いいたします。

 2004年秋に、UNLVホテル経営学の修士課程を修了した西川真です。2005年2月から ニューヨークのThe Peninsula New Yorkで働きます。

The Peninsulaというと、授業とかでは聞かないホテルですがどういうホテルなん ですか?

 The Peninsulaは、ニューヨーク、香港、シカゴ、ビバリーヒルズ、バンコクなど、世界7ヶ所で超高級ホテルを展開しているホテルカンパニーです。著名なホテルランキングでは常に上位にランクされています。日本の方には香港のThe Peninsulaが良く知られていると思います。香港のアフタヌーンティーは特に有名で、日本からのお客様が毎日のように列をつくっていますよ。

 現在はまだ日本には進出していませんが、2007年にいよいよオープンします。将来はそのPeninsula Tokyoで働ける事を希望しています。ニューヨークで世界一流のThe Peninsulaのホテル経営哲学を学び、それを日本に持って帰りたいですね。上海にも進出を決定しており、現在、世界で最も発展著しい上海でもいつか勤務してみたいですね。

なるほど。では2007年オープン予定のThe Peninsula Tokyoで働くためにThe Peninsula New Yorkを選んだのですか?

 そうですね。The Peninsula Tokyoがオープンすれば、The Peninsulaのこれまでの実績と、ホテルの立地として日本一といっても過言ではないくらいの位置にオープンするという二つのことを考慮すると、恐らくオープン後は日本一のホテルになるのではないかと考えています。ご存知の通り、ホテルは一に立地、二に立地と言われる位です。The Peninsula自体も東京は大変重要なマーケットととして捉え、15年前から進出を考えていましたが、中々良い立地を確保できず進出を躊躇していたようです。

 The Peninsulaは常に最高の場所でなければオープンしないというポリシーを頑なに守っています。アメリカ国内で見ても、ニューヨークは5番街、シカゴは魅惑のミシガンアベニュー、そしてL.Aではビバリーヒルズという具合です。チェーン規模の拡大に重点を置いて運営受託方式でホテルを広げるのではなく、所有‐直営にこだわる近年では稀なホテル‐カンパニーですね。ある意味では物凄い頑固なホテルとも言えるかもしれません。こういうこだわりに惹かれてしまいましたね。企業戦略レベルだけでなく、勿論、日々のオペレーションにおいても徹底的にこだわっています。それがThe Peninsulaの強さの秘密だと思います。

The Peninsulaは、世界各地に数ヶ所あるとおっしゃいましたが、なぜニューヨークを選んだのですか?
 ニューヨークという街が好きだからです。才能と野心で溢れる人達が集まり、歩くだけでエネルギーがもらえる世界唯一の街ではないでしょうか。それにニューヨークは、各分野において世界一流の人たちが集まる場所。そういった一流に触れることで、仕事の面だけでなく個人としても成長したいですね。私がホテルマンになりたての頃、あるお客様から「いいホテルマンになりたければ一流のものに常に触れるようにしなさい」と言われました。その通りだと思います。高級ホテルはただ単に寝るところではないと信じています。一つの文化だと思います。
そんなニューヨークでの超高級ホテルに就職するのは難しそうですが、どうやって仕事を探したのですか?
 最初からこのホテルが就職先の第一希望だったので、まずウェブサイト上にある 「Contact Us」にメールを送りました。そこで人事部の連絡先を教えてもらい、レ ジュメを送りました。すると、面接をしたいのでニューヨークまで来てくれないかと いうことで、ニューヨークまで面接を受けに行ってきました。
面接はどんな感じでしたか?

 面接は、まず副総支配人、人事部長としました。働きたい部署は指定しないで面接を受けたところ、フロントに空きがあるからフロントでどうかということにまとまりました。アメリカなどの就職活動の本などを見ると、希望する部署、ポジションをハッキリと定めて応募するようにとありますが、ここで働けるならどのポジションでも働くという意気込みでしたので、ポジションは指定しませんでした。今まで働いてきた料飲部門は勿論今でも大好きですが、何か違ったこともやってみたいという気持ちもありましたし。

 フロントはどうか、という問いに私にも異論はありませんでしたが、フロントオフィスマネージャー(FOM)がバケーション中ということで、FOMが帰ってきたら電話面接をしましょうということでこの日は一旦ラスベガスへ帰りました。そしてFOMとの電話面接をし、採用となったわけです。

面接では、どのようなことを重視されましたか?

 こちらの人間性と、働くモチベーションを重視されていたように思います。スキル や、何ができるとか、何を知っているかということについては全く問われることはありませんでした。要するに、やる気となぜ私がそこで働きたいのかを面接で確かめたかったのだと思います。他でもそうですが、意外にも超高級ホテルというのはスキルや知識を重視しないようです。このようなホテルの幹部や人事部長などはよく、「知識やスキルは採用後教えることが出来る。しかし人間性や適性、モチベーションは教えることは出来ない」というコメントをしていますね。確かに仰られるとおりです。それにしても全くその通りの面接でした。勿論、どうしても即戦力となる人材が欲しい場合や、マネージャー、そして会計やマーケティング部門などは例外だと思いますが。

真さんのどういったところが評価されたと思いますか?

 モチベーションの評価にあたり、私がThe Peninsulaについてかなり深く企業研究を していったことが有利に働いたと思います。面接の前に企業研究をしていくことは、 その企業に対して本当に尊敬の意を伝えるために重要なことです。なぜ、自分がこのホテルで働きたいのか、企業哲学のどこが気に入ったかなど、それをアピールし、モチベーションを相手に伝えることが大切です。特に高級ホテルは自分達の企業文化-哲学に物凄い自信と誇りを持っています。これはホームページ等を見れば一目瞭然です。自分がそれにどれだけ共鳴しているかを伝えることは大事だと思います。

  あと、質問はたくさん用意したほうが良いでしょう。様々な意見交換が活発になりま すし、何より関心があるという事を伝える最強の手段ではないでしょうか。それに本当にその職を得たいのなら当然質問も山ほど自然に湧いてくるものだと思います。

              

The Peninsulaは、ニューヨーク、香港、シカゴ、ビバリーヒルズ、バンコクなど、世界7ヶ所でホテルを展開。 著名なホテルランキングでは常に上位にランクされる超高級ホテルカンパニー。



なるほど。今回はフロントで働かれるようですが、今まではずっと料飲部門で働いておらてたんですよね。具体的には、どこのホテルでどんな仕事をしてきたのですか?

 最初は、「Four Seasons椿山荘 東京」でウェイターとして働きました。 その時はまだ、外資系ホテルが進出しはじめたときで、今のように日本では知名度はありませんでしたが、働いているうちに感銘を受けました。その後、先輩からFour Seasonsでの働きぶりを評価され、「Park Hyatt東京」へ誘われました。そ こでも、料飲で働きました。その後、UNLV Undergraduateのホテル経営学部に入学 し、卒業後、「The Ritz Carlton大阪」で料飲のキャプテンとして勤務しまし た。その後、UNLV Graduate Schoolに入学したのです。

そうそうたる日本の高級外資系ホテルで働いてきたのですね、すごいですね。こう いったいわゆる外資系で働いたことで、何か学んだことはありますか?

 高級ホテルが何たるかを実際に感じとることができました。クリエイティブなホテル のあり方や、ホテルとはあくまで利益を出さなければならないビジネスだとも学びまし た。いいサービスをしているだけでは利益は出ません。日本のホテルマンは、よりよいサービスをすればお客様がきてくれると思っていますが、そうではないことに気づかされました。

 The Ritz Carltonでは、キャプテンをやりながらリーダーシップの難しさについて深く考えさせられました。リーダーシップとは、知識とかスキルではなく、そ の人の持っている熱だと思います。その熱がオーラになり、極端な表現ですがカリスマへと昇華したとき、リーダーシップになるのではと思います。自分の周りに本気で何かに取組む人がいたとしたら、大半の人はその人を応援するものだと思います。そういう人には逆らうことの出来ない何とも言えないパワーがあります。熱だけで効果的なリーダーシップを発揮できるとは思いませんが、一番大事なことではないでしょうか。

先ほど、「よりよいサービス」とおっしゃいましたが、真さんが考えるサービスとは何でしょうか?

 こちらが本当に「お客様にとって心地よいサービスを提供しよう」という気持ちがあるなら、失敗してもお客様は許してくれると思います。日本のサービスは、「お客様は神様です」という信条を掲げてきました。「それ位お客様は大切な存在なのですよ」、という意味なら全く賛成です。しかし私だけかもしれませんが、相手が神様だと思ってしまったら、もうひたすら丁重に丁寧で間違いのないサービスを提供することにばかり神経がいってしまいます。何も間違いがないから良いかといえば、果たしてそうなのだろうかと、考えるのです。結果、特徴がなくつまらないサービスになってしまったのではないかと思います。

 外資系で働いていた外国人の上司がよく言っていましたが、「大切な友人を自宅に招いたときのようにもてなす」という気持ちの持ち方のほうが、ホスピタリティーという意味を良く表していると思います。昔は、神様でも良かったのかも知れませんが、時代が違います。まさしくハイテク−ハイタッチの時代ではないかと思うのです。

  特にこれまで私が勤務してきた超高級ホテルのレストランでは、料理の質やレストランの雰囲気などは当然のことであって、お客様は働いているスタッフ一人一人の個性を楽しんでいました。例えばその個性が、サービスに不向きと一番に言われるような個性であっても、特定のお客様にとっては、その彼、彼女に会うことが楽しみになるのです。これは非常に面白い現象だったと思います。ある意味では銀座の高級クラブのようなイメージではないでしょうか。やはり何時の時代も人間同士の繋がりに勝るビジネスはないと思います。

 昔、良く考えたことですが、今は地球の反対側であっても人はほぼリアル‐タイムにコミュニケーションが出来るわけです。だとするとホテルにとって大事なビジネス客というのは出張を必要としなくなり、ホテル業界というのは将来的に伸びないんではと考えたことがあります。しかし現実にはビジネストラベラーはやはり現地に行って人と人との直接のコミュニケーションを求めるわけです。そうでなければやはり仕事に支障があるし、相手を信頼することは出来ないということではないでしょうか。長くなりますが、それはやはりホテルでも一緒で人間対人間の交わりということが大切なのだと思います。個性がなければその交わりを印象付けることは出来ないと思います。

  ホテルにはマニュアル等スタンダードがありますが、それは基本中の基本です。本当 にお客様を楽しませようとする気、お客様の気持ちを考えることも大切ですが、最後には、サービスは個性にたどり着くと思うのです。そういえば昔、ベルギー人の上司が「自分のスタイルを持ちなさい」ともよく言っていました。そういった意味で、本当のサービスとは、人間性のビジネスだと思います。

  ファミレスでも、マニュアル通りの丁寧なサービスに限界を感じ、もっと親しみやすいサービスを提供するようになって来ました。昔はお客様が入店すると「いらっしゃいませ」が当然の掛け声でしたが、今では「こんにちは」が主流になっています。何故なら「いらっしゃいませ」ではそれで終わりですが、「こんにちは」ならお客様も「こんにちは」と応えることが出来、Two-Wayのコミュニケーションが可能になるからです。

なるほど、ちょっと真さんのサービス論に感動してしまいました。今まで料飲で活躍されてきたわけですが、今回The Peninsulaでレセプションで働くことになったのは なぜですか?

 決して料飲部門に関心がなくなったというわけではありません。料飲は面白すぎます。料理やワインを勉強すると奥が深くて、本当に一生ものだと思います。今回は、あくまで自分で新しいことをしてみたかったということ、そして現実的な話として、The Peninsula New Yorkに料飲部門にレストラン‐アシスタント‐マネージャー以外空きがなかったというのもあってフロントになりました。

レストラン‐アシスタント‐マネージャーとして働くことも提案されたのですか?

 はい。面接の時、レストラン‐アシスタント‐マネージャーもどうかという話もいただいたのですが、私自身がアメリカで働いたことがなく、文化や言語が違うところでいきなりアシスタント‐マネージャーをしてもいい仕事ができないと思いました。いい仕事ができなければ、働く意味もないし、先にも繋がらない。

  また、ニューヨークでは組合が強く、組合と問題なくやっていくこともマネージャーの大事な仕事です。ヒューマン‐リソースのクラスで組合の問題などを扱うことがありましたが、そこまで大事な問題だというのは正直今まで知りませんでした。やはり日本とは相当環境が異なると思います。ここはアメリカですから、余りにも仕事振りに問題があれば最後には解雇だって考えられます。

 The Peninsulaは、生涯をかけて働きたいホテルです。ここで失敗するよりは、むしろ自分のキャパシティーを広げるためにも、今までやってきた料飲以外をやってみたいと相手側に伝えました。 すると、向こう側からレセプションはどうかという返事がきたのです。ご存知の通り、ホテルのレセプションはオペレーションのControl Centerであり、ホテルの顔です。一度はやってみたいポジションでしたから、このポジションをオファーされても断る理由はどこにもありませんでした。

そうですか、分かりました。では、真さんの大学生活について触れてみたいと思いま す。そもそも、留学したきっかけは何だったのですか?
 外資系ホテルで働いていた時に、外国人の上司が多く、彼ら‐彼女らには体系的なホテル経営学を学んでいる人が多かった。自分には経営学といわれるものの知識は当時皆無でしたし、自分も学べばいいマネージャーになれるのではと考えたのです。今から考えれば、ホテル経営学を学べばいいマネージャーになれるかもしれないというのは余りにも浅はかな考えでしたが。 それに小さい時からアメリカに憧れがあったということもありますね。
UNLV Undergraduate Schoolはどうでした?
 UNLVホテルスクールでは、学ぶことは多かったですし悪くはありませんでした。ただ、Undergraduateは、ただの記憶の勉強だったように思います。それでも、それまで私の中にはなかった合理的・論理的な考え方を学ぶことができました。もちろん知識を持つのは大切なことですが、クラスで習ったことは忘れてしまうし、時代とともに陳腐化してしまいます。実際、特に高級ホテルに限って言えばよく注目されるRevenue Managementやフリークエント(リワード)‐プログラムの効果なども最近は疑問視されていますよね。大学では確かにその時に注目される事を教えてくれます。しかし、本当の効果の程はまだまだ議論の余地ありということを学ぶことが多いわけですから、それを金科玉条のごとく信じるのは危険です。しかし合理的・論理的思考というのは何かを考える際大変役立つものだと思いますし、一生の宝ではないかと思います。でもUndergraduate留学の最大の収穫はやはり日本が色んな意味で素晴らしい国だということに気づいたことかも知れませんね。
UNLVのGraduate Schoolはどうでした?

 Graduate Schoolでは、自分で考えたり、自分の好きなトピックをもっともっと深く勉強できました。さらに、ディスカッションが面白かったです。クラスには、よく現役のカジノ会社の副社長がいたり、アメリカ人の大学院生はほとんど現役マネージメントレベルなので、ディスカッションでも昨日起こった問題を議論したり、レベルの高い抽象的ではない現実的な議論を聞けて楽しかったです。

 私のUNLVに対する総合的な感想は、この大学のGraduateのプログラムは学者育成のためのプログラムという要素が強く、産業界に戻って更にキャリアを積みたい人間には別のプログラムがあってもいいのではないと思いました。

修士論文は書いたのですか?

 はい、書きました。ハーバードやコロンビア大学の教授が提唱している超最新理論を ベースにした論文を書きましたが、なかなか教授など周りからの理解を得ることができ ず、大変でした。おかげで、ものすごい数の本や記事を読んで、ものすごい量の知識が頭に入りました。面接などでは、修士論文のことには触れませんでした。しかし、高級ホテルにおける料飲部門に関する内容の修士論文を書いて、高級ホテルが人材に何を求め、お客様は何を求めているかを学べたことで間接的に面接に役立ったのではないかと思います。

ラスベガスはどうでした?
 ラスベガスという街は好きではありませんでしたが、ラスベガスの発展を見るのは楽 しかったです。今年オープンされる「Wynn Las Vegas」にはいずれ行きたいと思っています。
では、最後に未来へ.comを見ているみなさんへ、何かコメントをお願いします。

 UNLVを卒業したからといって、ホテルが手を広げてあなた達を待っているわけではあ りません。勘違いしないで下さい。アメリカNo.2と言われているホテルスクールを卒業したからといって、調子に乗っている人間ほど、就職先に苦労していたのを見てきました。会社が欲しい人材は、学位を持つ人間ではなく、仕事というものができる人間、やる気がある人間だということを忘れないで下さい。そのことを分かっている人間は、自分の周りを見渡しても自分の希望する仕事を手にいれていました。

 ようは謙虚であるべきだと思うのです。いいホテルに勤務したことで学べたこととして、こういうホテルにはたくさんの一般的に成功されているお客様が多かったのですが、皆さん本当に謙虚な方ばかりでした。成功されて自信があるから、謙虚になれるのか、それとも元々謙虚な人達かは未だ疑問ですが恐らく両方でないかと思います。偉い人はイスの上に踏ん反り返っているという社会人になる前に持っていたイメージはいい意味で破壊されました。

今日はお忙しいところ、インタビューの時間を下さってどうもありがとうございまし た。今後のご活躍を楽しみにさせていただきます。
 どうも、ありがとうございました。


 「やる気が大事」とおっしゃられたように、真さん自身も非常に熱く、こちらが圧倒されるくらいのお方でした。ホテルやサービスに関して、独自の理論を展開されるところは、さすがに超高級ホテルで働いてきた真さんならではと思いました。真さんの経験談やアドバイスは、これから就職活動をする僕たちにとって非常に貴重です。 インタビューをしていると、真さんが日本一のホテルになるであろうThe Peninsula Tokyoで働くという目標を達成できると僕達は思いました。 さらには、外資系が勢いづいている今の日本のホテル業界には、欠かすことのできないホテルマン、ホテル経営者へと駆け上がっていくことでしょう。今後の日本ホテル業界の発展と繁栄に貢献してくれることを願っています。

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