ホーム

先輩の声
就活日記
就職最前線
企業訪問
過去の活動
 
 EBIエッセイコンテスト EBI大賞作品

EBIエッセイコンテスト、大賞ついに発表!

 

<大賞受賞者の感想>

  まず、この度のエッセイコンテストを通じて、自分の志と展望を再確認する機会 を与 えて下さったEBIの藤田宏代表取締役をはじめ、未来へ.comの皆様、その他関係者 の 方々に深く感謝致します。

 また、拙著ながら大賞を頂いたことも大変励みになり まし た。当コンテストは"未来"がテーマでしたが、今回は発想を逆転させ、過去10年 の自 分に重点を置いて書いてみました。その所以は、過去の経験が自分の情熱を裏付 ける と考えた上で、未来を語るその言葉が空疎にならないようにするためです。

 私は 作曲 が専門なので、一つ一つの音に存在価値と理由を持たせるように日々努めていま す。 言葉に関しても同じ事が言えるのではないでしょうか。哲学者ジャンポール サ ルト ルは、存在はただ存在するのであり、そこに先天的な価値や理由は存在しないと 考え ました。一見ニヒルに思われますが、人生を意義深いものにするかしないかは、 自分 次第ということだと思います。

 我々の存在価値と理由というのは、真っ白なキャ ンバ スである自分の人生を、情熱と努力で綺麗に彩っていく過程と、そうして出来上 がっ た作品のようなものではないでしょうか。今回のようなコンテストはそんな"画材 選 び"に絶好の機会だと思います。これから先、このような機会を通じて少しでも多 く の人々が、各々の未来へ向かう志気を高めることが出来れば、より多くの意義深 い人 生が花開くのではないでしょうか。

 

 

 大賞に輝きました作品です。

 

 

 奨学金の創設。私が志すライフワークの1つだが、これは自らの渡米経験に起因する。

 ちょうど10年前、米国大学院で本格的に作曲を学ぶことを目指して勉強を始めた。当時から図書館に籠もってあらゆる英語書巻を渉猟していたため、大学卒業前には語学力にある程度の自身はあったが、留学資金調達の面で行き詰っていた。

 日本では返済義務のない奨学金を提供する団体は至極少ない上、国のサポートも皆無に等しい。米国の制度も調べてみたが、外国人だと余計に難しい。そこで出会ったのがロータリー奨学金。もともと米国の財団だが、日本でも奨学金の提供を行っている。早速地元のロータリアンに問い合わせたところ、その知遇を得ていざ試験に臨んだものの、最終面接で不合格。それでも1年待って再挑戦し、ようやく合格。遠大な目標の第一歩であるアメリカ行きの切符を手にしたのは、今から5年前のことである。  

 ロータリー財団の奨学生として望んだ渡米で、私は非常に興味深いことを学んだ。まず、私が今までここ米国で出会った全てのヨーロッパ人留学生は、奨学金をもらってここに来ているという事実。一方、日本人も含めて、奨学金をもらっているアジア人に私は一度も会ったことがない。

 自分の立場を誇示しているわけではない。しかしこの違いは何なのか。多くの奨学生は、多年の努力によりその能力や才能が認められ、留学の機会を与えられる。スェーデンでは、グローバルな人材を育成するため、国が積極的に留学生の経済支援をする。そして奨学生は、奨学金受給を維持するため、優秀な学績を修めるよう努める。

 それとは対照的に、私がここで見たのは、試験のカンニングのため、あるいは簡単な授業を選ぶために奔走、または協力しあう日本人留学生の有様である。私はこの状況を頗る疎ましく思う。先達の汗と涙の集大成として築かれた今日の日本。長引く不況に苦しんできたとは言え、国内総生産で言えば、まだ世界第2位の経済大国である。私はここ異国の地アメリカで、日本人としての矜持を高く掲げて1日1日を生きている。

 もちろん、アジア人ゆえに人種差別を受けたこともある。それでも私は日々、日本人としての礼を持って人々に接している。それが功を奏してか、大きな信頼を勝ち取る一方で、多くのギター、ピアノ、そして日本語の生徒を持つことができるまでになった。ある生徒の母親は、他の教科の家庭教師も絶対日本人に頼みたいと言ってくれる。全く日本人冥利に尽きるありがたい話である。

 そんな日本人としての誇りを、一部の怠惰な学生にアメリカまで来て蹂躙されたくはない。金さえ積めば誰でも留学できるという資本主義の功罪に歯止めをかけるのは難しいかもしれないが、日本人として、少しでも多くの優れた人材を世界に送り出し、そして彼らの困難を超克する強さと情熱をサポートしたい。日本国中の至る所で閉塞感、厭世観が募る昨今だが、それ屈せず、努力の尊さと、それが実を結ぶ悦びを皆に知ってほしい。私が奨学金を創設したい理由のひとつはここにある。

 奨学金だけに限らず、この5年間で私は多くの人々に助けられた。奨学金支給終了後、ニューヨークの同時多発テロ勃発。その影響でアルバイト先の飲食店をレイオフされ、空腹を満たすために友人が家に置いていった残飯を漁った事もあった。食べずとも学費だけは貯めたかったからだ。

 そんな中でも、一緒に働いていたメキシコの人々に比べれば、自分は幸せだと思った。メキシコ人と聞くと訝る日本人は多いが、彼らの多くは大きなリスクを冒してアメリカに不法入国し、自国で待つ家族に送金するため、ひたすら働く。彼らに私のような夢は存在しない。彼らには、「生きる」という人間として最小限のニーズを満たすのが精一杯なのだ。

 故に、「食べる」という我々日本人にとってごく当たり前のことが、彼らにとっては最大の関心事となる。無論、彼らだけではない。発展途上国と呼ばれる多くの国々では、それが日常なのだ。日本にいたらまず味わえない苦しみ、日本人ならまず味わない苦しみ。そんな当時の貴重な体験から私は、当初の目的であった「芸術の追求」よりも、もっと人間として根源的ものを学ぶことができたと思う。幸いにも私の場合、その苦境が長く続くことはなかった。

 上述の通り、多くの人の優しさに触れることができたからだ。ある儕輩は、日々の糧に窮する私の姿を見て、バイト先の残り物を差し入れしてくれた。また、作曲科の恩師は今でも無料で作曲レッスンを提供して下さっている。加えて、次に見つけたバイト先では、仕事だけでなく、上司の自宅の居間まで寝床として無償で提供してもらった。もちろんプライバシーなどは存在せず、勉強する時は専らトイレに籠ったが、当時としては、夜露をしのぐ場所と賄いがあるだけで充分だった。

 とはいえ、毎学期7000ドル近い学費を捻出するのは容易ではない。そんな時、落合信彦の留学回顧録中の「トップの成績を維持する限りは、学費の免除が約束されていた」というくだりを思い出した。幸い私も履修していた全てのクラスでトップの成績だったので、それを武器に経済援助の交渉を試みたが、外国人ということで一蹴された。やはり本のようには行かない。

 結果として、当時は1年間のうち、半分学校に行ければいい方だった。学校に行けないときは国内に滞在できなかったので、日本に帰ってコンビニ、引越し屋などで学費を稼いだ。また、あまりにも頻繁な帰国で両親の猜疑心を煽るのを防ぐため、帰郷の際は毎度、良心の呵責に苛まれながらも、「テロの影響」や「ビザの関係」など、周到にウソを用意した。そんな状況がしばらく続いた後、何とか大学院に入学。 大学で音楽を教える傍ら、家庭教師の仕事も次第に増えていき、渡米後4年目にして、ようやく生活が安定するようになった。多くの人々に支えられた忘れられない4年間である。

 こうしたの数々の厚情によって私の可能性は繋がれた。今度はその返礼として、私が奨学金を提供する側になって、未来へと可能性を繋げる番である。政治家になって国を良くするのも1つの手段であるが、私は作曲家として独自のアプローチをとりたい。勿論、そのためには、まず私自身が作曲家として立身成就しなければならない。目下の目標である音楽博士号取得も、そういった活動に着手しやすくするための布石でもある。

 奨学金の重要性は冒頭で述べた通りだ。容易でないのは百も承知である。10年では叶わないかもしれない。それなら一生掛かってでも成し遂げる。繰り返すが、これは「芸術の大成」と並ぶ私のライフワークの1つである。

 この5年間、夢を手にするために必要な「不屈の強さ」を自分の中に育んできたつもりだ。それでもこれら総べての経験は、私にとってまだ前哨戦に過ぎないと思っている。これからが本当の戦いである。この先、更なる困難が私を待ち受けているかもしれない。しかし、それがまた楽しみなくらいである。そんな半ば自虐的な自己鍛錬への傾倒は、侍の血を引く気質からであろうか。そしてこれからの生涯、作曲家として、今まで支えてくれた全ての人々に、自分が書いた心からの音楽を捧げたい。この思いが私の人生で最良の「楽器」になることを祈りながら。畢竟、私のすべての創作活動は、彼らに対する、そして私の育った社会に対する「恩返し」の思いからなのである。

  

   藤田宏さまからコメント頂いております。

 

   今回の論文コンテストで大賞、及び奨励賞を受賞された皆さん、おめでとうございます。 応募作品はどれも応募者の熱い夢がしっかりと書かれ、心から頑張れよ!と応援したくなるものばかりで、選考に苦労しました。  

   現在、日本においては、教育の機会が均等に与えられる環境からどんどん離れてきています。やる気はあっても親の経済力の関係でそのチャンスを奪われてしまう子供達が、残念なことですが今後増えてくるでしょう。現在の日本で働くこともしない"ニート"と呼ばれる若者が急増したのも、頑張る機会さえ与えてもらえないという環境から来ているでしょう。 熱い夢を持つ若者達のために、多くの夢を実現するための支援制度の構築。是非とも実現させて下さい。

   株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所                          代表取締役社長 藤田 宏

 

EBIエッセイに戻る

過去の活動に戻る